七宝焼アーティスト 斉藤芳子 || 七宝焼アトリエCOCO

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ウズベキスタンビエンナーレ

七宝工芸作家 斉藤芳子

■10月18日(金)
 朝5:30に前橋駅より成田空港に向かう。空港には、マンスールさんやファッション関係の方々、映画「釣りバカ日誌」の栗山富夫監督、芸術祭や映画祭などを企画している松本行央さんなど14名がそろい、ウズベキスタン・タシケントビエンナーレに出発。タシケント空港にはウスマノフ氏が来てくださっていた。いつも出口は時間がかかるのだけれど、今回はVIPとして通してくれたので、二人で80kgの荷は難なく税なしで通ることができる。
 この後、キャラバンサライの車で2台つながって文化センターの講習会会場に、まず今回のために用意した材料、作品、土産を下ろす。
 これでだいぶ軽くなり、本日からの宿ウズベキスタンホテルへ。古いけれどなかなか重々しいホテルだ。1日に結婚式が4~5組あり、これが何と800~1000万円ものお金をかけるという。
 親がお金を出すことも多いのだそうだけれど、いざ二人のスタートという時には、お金がぜんぜんなくなってしまうというのは何とも理解しがたい。近くは広い公園で、いろいろな遊具のネオンが夜はとても美しい。

※結婚式:1,000万円近くかかる。歌手に20万円、レンタカー3万円、結納金20万円、式に800万円、式用のレンタカーは1台20万円。客は300~500人。

■10月19日(土) 七宝焼と切り絵講習会
 19日は伊藤先生の切り絵のワークショップで、ベクゾット芸術大学の1年生を教えることとなる。20人定員の所、少しオーバーで材料が足らなくなる。来た人みんなに、伊藤先生が額をプレゼントする。さすが芸術大学の生徒だけあって、とても良い作品をそれぞれに持ち帰った。
 今回は2名の作家で、タシケントで教えるので、七宝を斉藤が教えるときは伊藤先生がアシスタントで、伊藤先生の講習のときは、私、斉藤がアシスタントをして、とても上手い具合だった。
 七宝は、前回はネックレスだったので、今回20名全員がキーホルダーを作った。炉から作品が出ると、皆が「ワー」と歓声を上げるのが、とても嬉しい。

■10月20日(日)
 20日は、イザット君をお願いして、皿の絵付けをしている作家夫婦のアトリエをお訊ねする。近々、焼物の工芸学校を作り、校長になるのだそうで、私に教えに来てくれないかと声がかかる。
 イザット君と伊藤先生と3名でヨルキーパルキーにて、食事。近くに大きなバザールがあり、そこでクミンシードのスパイスや、干しブドウなど買う。その後、大きなデパートにタクシーで行くが、まるで東京のデパートのようで人が溢れている。こんな所で、皆、タシケントの人々は買い物をしているのだと初めてわかった。

■10月21日(月)
 今日の14:00に七宝教室が無事終了する、約20名。1年ごとにウズベキに行くと、毎年新しい芸術大学の学生の顔ぶれに会えるのだそう。いつになったら通訳の人が来てくれるのだろうと思っていたら、やっとタタール人で、ウズベキに住んでいる東洋大学の学生、イルミーナさんが通訳としてやって来てくれる。今までとても心細かったけれど、何か救われた思い。彼女は日本の筑波大学に1年来ているし、その前までは東洋大学日本語科で学んでいるので不自由ない。
 今回のアーティストみんなを2台のベンツのバスで、モスクや土産物のあるところに、少しだけ観光のようなことをしてくださったけれど、何もほしいものがなくてポーチを少しだけ買う。私のほしい、目玉のアクセサリーはない。
 中央展示場にて、以前の文科大臣と、なつかしく握手。この人は世界中の中心になる場に、像を作っている方だ。伊藤先生を紹介する。
 夜のイベントでは、私は「袢纏(はんてん)」を着た。韓国、エジプト、フィリピン、中国、アラブ、スペイン、いろいろな国の人たちと交流。

■10月22日(火)
 今回の大イベントのメインである、中央展示場に行く。中央に大きな造形作品が立っていて、1F2Fとさまざまなテクニックを使った、世界45か国の作家の作品が飾られていて、興味が尽きない。とても刺激になる。
 アゼルバイジャンの女性作家が、ロウを利用して、巨大な染色を出品していたが、私はこれが全作品の中で一番気になっていた。ところが朝食バイキングのときに、偶然に隣合わせで会話をした女性が、この作品の作家であったことは何と不思議な出会いなのか・・・。
 その後、博物館見学、ウズベキの歴史を見ることができた。その後、夜のユースパレスのセレモニーに、全員バスで出かける。夜のイベントで寒い中、いろいろな出し物とモダンで巨大なネオン、そして宇宙からの祝いの言葉。ステーションが大画面に映し出され、飛行士からのメッセージをもらう。本当にスケールが大きくて、驚きである。私はピンクの羽織でスカーフを巻いて出席。
 夜は豪華な料理、歌、踊り。皿が次々と出てきて、肉、魚、肉と、誰も食べきれない。こんな素晴らしい会場が、なんとタシケントの市役所なのだそうだ。
 各国のアーティスト、通訳の人たちみんなが、ごっちゃになってダンスを踊りだす。

■10月23日(水)
 昨日のダンスのせいか、なんだかみんなが打ち解けて、とても仲間意識が出て来た。やはり、あんなふうにリラックスする時間も大切なのだと思う。

10:00~12:00
 タシケント写真館に、午前はオープニングセレモニーがあり集合する。とにかくウズベキ時間で、みんなが集合するのに、いつも1時間はかかってしまう。なんでこんなにゆっくりなのか不思議だけれど、こんなとき、バスの中でいろいろな国の人たちと会話をする良いチャンスでもある。
 写真館は写真に限らず、いろいろなインスタレーション、踊り、セレモニーなどあっておもしろい。
 毎日毎日、同じようなメニューで胃が疲れてしまい、今日は食事をパスして焼きそば、おかゆ、なめこ、梅干しと、久しぶりの食事を部屋で取り、通訳の好青年アクバル君にはカレーラーメンを食べてもらった。午後、空き時間があったのでアクバル君に、母校の東洋大学に連れて行ってもらい、一度お目にかかったことのある、菅野れい子先生にお会いすることができた。

15:00~17:00 東洋大学にて
 前回お邪魔したときは、日本語科の学生たちとトークするだけだったが、みんなが日本へ行ったわけではないのに、とても上手だ。ウズベキスタン中の選りすぐりの優秀な生徒の集まるところである。
 図書館にビッシリ、日本の本が詰まっていて、これは菅野先生がこの20年苦労して集めた本であるとのこと。日本から運ぶのにまとまると100万円くらいかかってしまうのだが、これを日本のJICA(国際協力機構)やODA(政府開発援助)が負担したのだそう・・・。法政大学の処分された本ももらったとか。

17:00~
 夜は中央ひろばで、オープニングセレモニーがあり、又もや歌、踊り、各国アーティストの紹介があり、パンのお土産をいただく。1F2Fのフロアを改めて見物する。■10月24日(木)
 最終日、チェックアウトしてバスの中にトランクを3個乗せる。28日までこのイベントはあるけれど、最終日の(私たちの)スケジュールはベクゾット芸術大学のファッションショー。ベクゾットの前にお邪魔したときの先生と抱き合って挨拶。バイリンガルの美人先生だ。とても生徒がやったとは思えない、すばらしいデザインのファッションショーを、私たち45か国の作家とその通訳のメンバーにくりひろげてくださった。
 その後ワークショップが教室で行われ、外国作家4名がスライドレクチャーをしながら説明。日本からインスタレーション作家で、ドイツに住んでいる山本さんがワークショップをしてくださった。
 その後、キャラバンサライに移動し、いよいよ私たちの出番。オープニングに向けてテレビのインタビューを受け、庭でレセプショが行われる。
 18:00に出発なのだが、ここで帰りは一人20kgまでと知らされる。ウスマノフさんともう一台の車のスタッフと2台、それにアクバル君も乗り込んで来てくれる。彼は学生証を見せて中まで入れたので、本当に助かった。1つトランクを捨てたので1万円の税は払わずに済む。
 帰りは気流の関係で、8時間弱で日本着。

■一口メモ
●ウズベキの地下鉄は、シャンデリアで天井が埋め尽くされ、ここは高級ホテルのロビーに入ってしまったのかと思うような豪華なしつらえだ。それに90円ほどでどこの駅に行くのもOK。けっこう便利にできている。以前のサンクトペテルブルグの地の底に入っていくような不気味さはないが、やはりソ連時代の影を感じる(サンクトペテルブルグは地下壕としても作られていたようだ)。
●映画やファッションなどさまざまなことを同時にやっているのだが、私たちはなかなか見ることができない。同行の人たちは、いったいどんなふうに発表しているのだろう。
●この国の主産業は石油とゼネラルモーターズ(GM)。1996年は韓国の自動車が主流だった。2008年よりアメリカのGMが全国を占めている。国産の自動車はシエルラレット(cherrolet)という。
●以前に何名かの聞いていたTELにかけても通じない。何でウズベキの電話は通じないのだろうと不思議に思っていたところ、9987の番号は、今は使われていないとか。局が潰れたそうである。通じないのは当たり前だった。
●「ありがとう」という言葉が二つあって、ロシア語だと「スパシーバ」、ウズベキ語は「ラフマット」。通常は「ラフマット」の方が良いようである。
●大統領の娘さん、この度のフオンドフォーラムの中心的人物だが、テレビの歌番組にプロモーションフィルムと共に素晴らしい歌が流れて、40才くらいとのことだが、歌手でもあるし、ウズベキの文化を企画、プロモーションしている人物でもある。同行の松本さんは一度お会いしたそうで、とてもステキな女性とのこと。
●タクシーは近場だと、1,000スムを4~6枚(2~300円)。
● ウズベキスタンは、国内の製品を第一として、日本の自動車の企業がどんどん入ってこないように、関税を2倍にしている。

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