七宝焼アーティスト 斉藤芳子 || 七宝焼アトリエCOCO

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ウズベキスタンの旅 2016

2016年初夏

七宝工芸作家 斉藤芳子

■2016年6月17日
 6月17日より8日間のウズベキスタンの旅を、女浮世絵師みはし・まりさんと、その御主人の富家氏、娘の恵美子と4人で、成田空港より出発する(ウズベキスタンまでは9時間の空の旅)。

■2016年6月17日
 ウズベキスタンの空港で、前方に迎えのウスマノフ館長の姿が見え一安心。私たち親子は、親しい友人で、昨年9月に天国に旅立たれた、七宝作家新山礼子さんの御主人から、ウズベキスタンへのプレゼントをお預かりし日本から数十キロも持って行ったため、2台の車でのお迎えは本当にありがたいものだった。キャラバンサライ文化センターに到着後、まず第一に、センターのガラスケース4台に新山さんからの贈り物の七宝の品々を納め終り、友人の遺影を中に入れた。長い間気にかけていた事だったのでホッとした。
 その後すぐ近くに予約しておいたホテルに行く。あまりに安くて、居心地の良いのにビックリ。こんなホテルなら一カ月いるのも可能と思う。プール、サウナ、クーラーはもちろん、自炊もできる。そしてタップリの朝食付き。5分ほど歩くと大きなスーパーがあり、大抵のものは間に合う。素晴らしい立地だ。
 ホテルのネコが甘えて、からまったり、ゴロゴロのた打ち回ったり、可愛い。自宅のネコは今頃どうしているだろう。部屋のあちこちに絵画や焼き物があり、すっかりこのホテルが気に入ってしまった。

■2016年6月18日
 ホテルを9:00出発。9:30より茶会に4人を招待していただく。文化センターの中に茶道の部屋が1つあり、朝から美味しい日本茶を飲ませてもらった。10:00より続々と人が集まり、新聞社、テレビ局と入って来て賑やかな中、みはし・まりさんが、畳3枚分ほどの紙に、「CODO」の太鼓の音と共に、巨大な龍を太い筆で書き上げるパフォーマンスが始まる。みんな、その迫力に圧倒されたようだ。その後スライドレクチャーがあり、次は私の七宝焼き講習。10名までというのに、我も我もと結局17名まで増えてしまった。予定外の人数で私も汗だくになる。
 通訳のベック君(大学院生)が来てくれて助けてくれる。彼は今、ラマダン(イスラム教徒が断食を行う約1カ月間を「ラマダン」という。)の期間で、日中は食事もできない、水も飲むことができない。夜8時過ぎなら食事をしても良いのだそう。みんなでレストランに入ってもベック君は一人で遠くの椅子に掛けていて気の毒だ。

■2016年6月19日
 今日の七宝焼き講習はマスターコース、画家やセミプロの方々。少人数で7名ほど、少し手の込んだものを仕上げる。ベースの台は日本から焼いたものを持って行って、直ぐに作業に入れるようにしておく。ワンランクレベルの高い物に仕上がる。
 みはしさんは今日もパフォーマンスを行う。「生」という巨大文字を書き上げる、絵文字というものをウズベキスタンの50名ほどの人々にレクチャーをした。ウズベキスタンの人々は日本的なものにとても興味があるようだ。
 驚いた事に、1年前に食事を自宅に招いてくださった前文化副総裁が亡くなられたことを知る。私が日本から4万円もする薬を買って届けたのだが(現地にてスムで支払ってもらったので重いほどの紙幣、1スム札が30~40円ほどなので)、バックに入りきらないほど大量のお金だった。残念だけれど、すい臓ガンで何の薬でもダメだったとのこと。世界中に巨大彫刻を作る方で、その才能が惜しまれる。日本にも池田大作氏に頼まれて作品を作ったとのこと。

■2016年6月20日
 午前は今までのものを片付ける作業。今回は恵美子(娘)がいてくれて本当に助かった。
 昼にウスマノフさんが4人に食事をご馳走してくださる。民芸館の前のとても良いレストランだがチャイハナ(外の席)を希望する。外の方が安いので、プロフやヨーグルト、サラダ、お茶といろいろウズベキスタンの料理をいただいた。その後レストランの奥の食事を作っている所を見せてもらい、大きなパン窯やプロフの大鍋など見せてもらう。
 その後はウスマノフさんの車で5人揃ってチョルスーバザールに連れて行ってもらい、シルクの服、アトラス文様の布、スパイス、ナッツなど土産を買う。ここで焼きたてのアツアツのサモサをいただく、とても美味しい。
 夜はホテルでインスタントうどん、ラーメンなど日本食を食べて胃を休める。

■2016年6月21日
 キャラバンサライの車で、次に泊まる五つ星ホテル「ミラン」に行く。ミランはタシケントの中心にあって、東洋大学、日本大使館、ウズベキスタンホテル、国際広場など、皆近くにある。30分ほど歩けば、ナボイ劇場にも行ける。部屋は、今まで6回ウズベキスタンに行った中で、最高で、広いし、綺麗だ。今回のような飛行機とのセット割引でもない限りは泊まれない。
 今回の旅で松岡さんという女性医師に大変にお世話になった。私たちが何度も来ているのに、あまりタシケント見物をしていないことを気の毒と思ってくださったようである。美しい川の畔の喫茶で果物入りの紅茶を飲み、安くてもとても高級な感じのレストランに案内していただいた。タシケントの緑に埋もれた川や噴水を8,000歩も歩き、中山恭子前大使(在ウズベキスタン特命全権大使)が植樹されたサクラ公園や新しい真っ白なモスクへも案内していただいた。松岡医師は脳卒中の権威で、日本で新薬(発症から3時間以内であれば血の塊(血栓)を溶かす薬)を広める中心になった人物である。今はタシケントで3年医療活動をしている。

■2016年6月21日午後
 みはし・まりさんがナボイ劇場の中に自作を寄附する件で大使にお会いすることになる。日本大使館はこじんまりとしたこところに見えたが、中は大変に厳重で二重扉になっており、細い階段でぐるりとまわり、加藤大使の部屋に案内される。ちょうど、今回は10年ぶりのウズベキスタンと韓国の大行事に重なり、各国の代表が7名ほど集まっているため、外出時に何度もチェックを受け、その度にバックを開いて中を見せなければならなかった。
 ナボイ劇場近くにギャラリーや古本市、デパートなどがあり、夜はアイスクリーム屋やハンバーガー店に人々が大勢たむろしている。ウズベキスタンの人々は甘いものが好きなようだ。
 でもこの界隈はとても物価が高く、サモサが50円とすると、ハンバーガーは480円、ドレスはみな1万円以上もして、ブランド品も多く、タシケントはお金持ちが多いのだろう。帰りのタクシーは通常の3倍ほど、夜は高くなるようだ。
 ウズベキスタンの夜は8時近くまで明るい。おかげで1日がフルにスケジュールをこなせるので中身の濃い日となる。

■2016年6月22日
 ミランホテルの豪華な朝食をいただき、私の方は調子がいいのだけれど、娘の恵美子が、また今回も以前のようにお腹を壊して、仕方なく午前予定のアライバザールはあきらめ近くのスーパーで買い物をする。
 ウズベキスタンの無花果、メロン、クッキーなどを買う。ウズベキスタンの果物は特別甘くて、桑の実などあまりに甘くフルーティーなのには感動!
 ホテルの部屋でテレビを観て過ごすが、ウズベキスタンのテレビは2チャンネルで身近なニュースが観られる。私たちのイベントもここで紹介してくれる。前に泊まっていたホテルは、ケーブルテレビだけで500もチャンネルがあるのだそう。
 夕方6:00よりナボイ劇場のオペラ見物。今回は地元のオペラで素朴な恋愛物語だった(700円くらい)。舞台は日本の4倍ほどで、やたら広く、この広いスペースを埋める舞台装置を作り上げるのに一体どんな人がどのような方法でやるのか想像がつかないほどである。
 ナボイ劇場は数年掛けて改修したばかりで白と赤に統一され、綺麗過ぎて歴史があまり感じられないようだった。

■2016年6月23日
 ミランホテルはチェックアウトが12:00。二人で昼にホテルを出て一人20kgずつの荷を持ってタクシーを探す。ところが各国のトップの車が通行するため、40℃の太陽の照りつける中いくら歩いても、交通がストップされていてタクシーが来ない。やっと止まった車が小遣い稼ぎの一般人の車で、道がわからないのに大丈夫と言って私たちを乗せてしまい、あちこちグルグル乗り回され、一方通行や悪路を通り、やっとキャラバンサライに着く。歩いても行けるくらいのところなのに・・・。言葉が通じないので文句も言えず支払ってしまった。
 帰りもキャラバンサライから車2台で送ってくれたのだが、国際イベントのため遠くに車を着けなければならず、重い荷を長い距離運ばなければならなかったが、みはしまりさんの御主人に助けられてやっと国際線ロビーにたどり着けた。
 ウズベキスタンはイスラム教の国ではあるけれど、ソフトイスラムで、親日的で、人々が優しい。パリコレの20パーセントがウズベキスタンの女性であるほど、美しい人の多い国だ。3月21日の、日本の正月のような、ナウローズの時などにぜひ行ってみてはいかがだろうか。
<完>

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